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斉藤と隣のタルパ達

タルパに関することをちまちま書いています
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字書きパー

 変なタイトルだと思うが、僕も思ってる。
 「文字書きタルパー」の略だと思ってるが多分何も間違ってはいないはず。

 Twitterタルパ界隈で「#字書きパー本気のパ描写」というタグが流行っていた時期があったので、僕もそれに参戦してタルパの描写をしていたが、気が付いたら流行りは廃れてた。哀しみ。

 とはいえ、一度書いたものを見せずにお蔵入りするのもどうかと思い、Twitterだけでなく、このブログでも載せることにした。割とお気に入りの描写だが、数年後には見るのもしんどくなるようなものになっているのだろうか…。書いてた時は本当に楽しかったです(大満足)

 今回書いたのは荒谷先生の描写。いつか不知火や大輔も書きたいと思っている。



 ――― 聞こえるはずも無い嗚咽が、六畳の小世界に響き渡る。

 おいおい、おいおい。愛を求めて鳴くセミが可愛らしく思えるような慟哭に、眠気を抱えながら目を覚ます。カーテンの隙間から覗き込む自然の灯(げっこう)を頼りにぐるりと見渡せば、小世界の隅にある柱にもたれかかり、項垂れるようにして荒谷 雄(かれ)は哀哭の声をあげていた。

 絹のように美しく、毛の先々まで整えられていたはずの黒髪は、手入れが施されていない庭の如く、無秩序に掻き乱れており、喪服と見紛うスーツには細やかな皺と真新しい涙の痕。その上から、別の体液がボタボタ、ボタリと、降りかかるものだから、思わず“汚らしい”という単語が喉元から込み上げそうになる。喉元に込み上げた単語をゆっくりと反芻(のみこ)み、吐き出さぬように心掛けながら、赤子をあやすような声で彼の名を二度呼ぶ。

「先生、先生。」

 彼だけがいた世界に聞こえるはずも無い声が二度も響いたものだから、慟哭をあげ、疲弊しきった体を二度、震わせた。澱んだ空気と乾いた血を乗せた朱殷の瞳が僕に向けられる。

「なんだ、起きていたのか。」

 気を遣わせまいと、顔に張り付いた体液、全てを裾で拭いとる。赤く腫らす瞳以外は何時も通りの荒谷雄に戻りつつあるが、どうにも拭いとった裾ですんすんと泣いているように思えた。

  どうして泣いているの?なんて、そんな些細なことを聞くまでも無い。そもそも彼が涙する理由など、この小世界が始まる前から理解している。愛してくれる者などいやしない。誰もが抱える憂いを嘆く、哀れな奴に僕は歩み寄る。僕と彼。恋人かと錯覚するような距離の中から、指を頬の上で踊らせるようにして触れた。そして、

僕だけは、貴方を見捨てない。

 彼が抱える憂いを掻き消す、魔法の呪文を唱える。ああ、そうか。彼は一言だけ零した後、より一層大きな声をあげた。涙を流していたが、笑っているようにも聞こえた。否、嗤っていたのかもしれない。つんざくような声を無視し、するりと体を絡ませ、広々とした背中を触れ、撫で回した。大丈夫、大丈夫。根拠のない言葉を並べる様は全くもって、僕らしくない。

 彼を落ち着かせる為に目を見遣ろうとする。だが、目よりも先に、ゆっくりと開かれた口の方に目が言った。何か、言葉を紡いでいたが、あまり深くは聞き取れない。もしかしたら、

「見ないでくれ。

 彼はきっとそう言っていたのかもしれない。何故、と。聞き返すその前に。彼は崩れ落ちた。落ちた、おちた、堕ちた。

 ワックスがけされた床の上に、汚らわしい色を纏う、伸縮性のある流動体が滲み出ては、溢れ、侵し、踊り始める。腕も、脚も、体も、顔も。人間を構成する全ての部位から黒の流動体がどぷどぷ、どぷどぷと、止まることをいざ知らず。ただただ流れ、堕ちていく。小世界の片隅から侵食する液体の正体なんてわからないはずなのに、僕はそれが全て「彼」である事を直感的に理解した。

 人でも無い。獣でも無い。怨嗟と罪悪感の果てに身も心も怪物に成り下がった、とある男の成れの果て。それがこの荒谷雄。なんとも哀れな化物なことか。ヒトの形を保てず、崩れ堕ちた貴方を見た僕は涙を流さずにはいられなかった。それでも、僕は、この化物に向かって、大丈夫だから。と、それこそ根拠のない言葉を吐き続ける。

 どのような姿に成ろうと、貴方は僕が敬愛する荒谷雄であることに変わりはない。
 だから。どうか、泣かないで。

 陳腐だが、どうしようもないほど愚直で、知性すらも感じられない言葉を紡ぎ出したが、声にすることはできなかった。頭では化物なんかではない理解していたが、心はそれを拒絶するように慟哭をあげていた。
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